『ワンダヴィジョン』完全解説|難解な設定と伏線をわかりやすく読み解く

1950年代風の白黒テレビ番組セットに立つ夫婦のシルエットと、その背後に広がるカラフルな現実世界の境界線 ドラマ
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『ワンダヴィジョン』、1周観ただけでは何が起きていたのか掴みきれない——そんなモヤモヤを抱えている方も多いのではないでしょうか。

本作はマーベル・スタジオ初のオリジナルドラマで、全9話。1話ごとに時代の違うホームコメディを再現するという、異例の形式で作られています。

実は、あの明るいシットコムの正体は、ヴィジョンの死を受け入れられなかったワンダが魔法で作り上げた「偽物の世界」でした。街ひとつを丸ごと書き換えていたのは、ほかならぬ彼女自身なのです。

そこで今回は、ウエストビューの真相、黒幕アガサ・ハークネスが序盤から放っていた違和感、そして意味を持つ劇中CMの伏線まで、順を追って解き明かしていきます。

ぜひ最後まで読んで、あの不気味さの正体を掴んだうえで2周目に挑んでみてください。見える景色が、まるで変わります。

※以下、結末まで含むネタバレを扱いますのでご注意ください。

『ワンダヴィジョン』とは?あらすじと基本設定を解説

『ワンダヴィジョン』は、2021年1月15日からディズニープラスで配信が始まったマーベル・スタジオ初のオリジナルドラマシリーズです。全9話で、最終話は同年3月5日に配信されました。

物語の舞台は『アベンジャーズ/エンドゲーム』の決戦後。ウエストビュー郊外へ越してきたワンダとヴィジョンが、理想の結婚生活を送る場面から始まります。

各話ごとに時代設定が変わる異色の構成

本作は1話ごとに、時代の異なるアメリカのホームコメディを再現します。第1話は白黒の50年代風、第2話は60年代風、第3話でカラーの70年代風へ切り替わります。

第5話は80年代風、第6話は90年代風、第7話は2000年代風です。映像の質感が新しくなるほどワンダの心の綻びが表面化する仕掛けになっています。

監督・脚本・キャスト

監督はマット・シャックマン、脚本統括はジャック・シェイファーです。ワンダ役はエリザベス・オルセン、ヴィジョン役はポール・ベタニーが映画版から続投しています。

隣人アグネス役のキャスリン・ハーン、モニカ・ランボー役のテヨナ・パリス、天体物理学者ダーシー・ルイス役のカット・デニングス、FBI捜査官ジミー・ウー役のランドール・パークが鍵を握ります。

『ワンダヴィジョン』は何話?各話の時代設定と配信日一覧

全9話で、週1話ずつの配信でした。時代設定と配信日を並べると、物語の進行と映像の変化が対応していることがひと目で分かります。

話数 時代設定 配信日(日本)
第1話 1950年代・白黒 2021年1月15日
第2話 1960年代・白黒 2021年1月15日
第3話 1970年代・カラー 2021年1月22日
第4話 現実世界(時代演出なし) 2021年1月29日
第5話 1980年代 2021年2月5日
第6話 1990年代 2021年2月12日
第7話 2000年代 2021年2月19日
第8話 過去回想中心 2021年2月26日
第9話 最終話 2021年3月5日

各話のタイトル表記はディズニープラスの日本語表記が正となるため、視聴前に配信ページでご確認ください。第4話・第8話・第9話だけ時代演出が外れている点が、後述する偽CMの有無とも重なります。

『ワンダヴィジョン』の謎の答えは?ヘックスの正体を解説

ウエストビューを覆う世界は、ワンダの魔法で作られた幻想です。作中ではこのバリアを「ヘックス」と呼び、街の住人は実在する市民が力によって役を演じさせられている状態でした。

真相が明かされるのは第4話

第4話で視点が現実側へ移ります。指のパチンで消えていたモニカ・ランボーが病院で目覚め、SWORDのエージェントとしてウエストビューの調査に加わる流れです。

ダーシーが街から出る周波数を拾ってテレビへ繋ぐと、第1話から第3話のシットコムが映ります。そして登場人物が現実では失踪扱いだと判明します。

第2話の違和感は外部からの接触だった

第2話でラジオから聞こえた「ワンダ」と呼びかける声は、ヘックス外からマイクで交信を試みたジミー・ウーのものでした。ダーシーは受信と解析を担う側です。

マンホールから現れた防護服の男もSWORDの隊員でした。序盤の不可解な現象は、幻想の外側から現実が侵入してきた瞬間だったわけです。

モニカはヘックスを通過して能力を得た

モニカは作中で二度ヘックスに出入りし、その過程で身体が変質して光を操る力を獲得します。第9話では銃弾をすり抜けさせる場面も描かれました。

これは単なる副産物ではなく、後の映画『マーベルズ』へ直結する布石です。筆者としては、ワンダの悲劇が別のヒーローを生む導線になっている点が本作の巧さだと考えています。

※画像はAIによるイメージ

なぜワンダは『ワンダヴィジョン』でウエストビューを作った?理由を解説

理由は、ヴィジョンの死を受け入れられなかったからです。第8話でアガサがワンダの記憶をたどり、経緯が明かされます。

ワンダ自身も自覚がなかった

本人もなぜヘックスを作れたのか分かっていませんでした。感情が限界に達した結果として力が溢れ、住民を巻き込む世界が生まれてしまいます。

悪意ではなく制御できない悲しみが原因だからこそ、本作は単純な善悪では割り切れません。

「悲しみとは、永続する愛ではないのか」という台詞

第8話の回想で、兄ピエトロを失って泣けずにいるワンダへ、ヴィジョンが「悲しみとは永続する愛なのではないか」という趣旨の言葉をかけます。

この一言が、ワンダが街を作った理由そのものです。愛を手放したくないから悲しみも手放せない——本作のテーマが一文に凝縮された場面だと筆者は受け取りました。

力の源は「マインドストーン」

アガサは記憶をたどり、ワンダがインフィニティストーンの1つであるマインドストーンによって力を増幅されていたことを知ります。

そして無から存在を生み出す力を危険と断じ、その力をカオス・マジック、ワンダ自身をスカーレット・ウィッチと呼びました。

黒幕アガサ・ハークネスの伏線を解説

隣人アグネスの正体は魔女アガサ・ハークネスです。第7話の終盤、彼女が最初からすべてを仕組んでいたことが本人の口から明かされます。狙いはワンダの力の秘密でした。

第1話から仕込まれていた違和感

第1話で、料理に慌てるワンダへアグネスは手の込んだ料理を勧め、すぐ作れるはずだという趣旨の言葉をかけます。魔法を使えば一瞬だと知っていたからこその発言と考えられます。

第5話でも、双子が捨て犬を拾った直後に犬小屋を持って現れました。誰も知らないはずの出来事を把握していた以上、監視していたと見るのが自然でしょう。

常識的な反応をしないという最大のヒント

第5話で双子は0歳から5歳、さらに10歳へ一気に成長します。誰もが驚くはずの場面で、アグネスは表情を変えず犬を抱えて笑っているだけでした。

この「驚かない」反応は、彼女が世界の外側の存在だと読める伏線でした。2周目で観ると、彼女だけが常に会話の主導権を握っていることにも気づきます。

ヴィジョンをけしかけていた行動

第6話、街を出ようとするアグネスにヴィジョンが声をかけると、彼女はヴィジョンがアベンジャーズであり既に死んでいると告げます。

ヴィジョンの力でワンダの世界を内側から壊させる狙いだったと考えられます。筆者としては、アガサは黒幕というより「観客の代理人」だった見立てです。彼女が問い続けたのは、私たち視聴者が抱いた「なぜこんなことが可能なのか」そのものでした。

ピエトロは誰だった?ラルフ・ボーナーの正体を解説

第5話ラストで現れた「ピエトロ」は、ワンダの実弟ではありません。アガサに操られていたウエストビュー住民ラルフ・ボーナーで、演じたのは20世紀フォックス版『X-MEN』シリーズでクイックシルバーを演じたエヴァン・ピーターズです。

なぜ別俳優が起用されたのか

配信当時は「マルチバースの合流」を期待する考察が世界的に広がりました。しかし第9話で正体が明かされ、劇中の役割はワンダを揺さぶるためのアガサの駒に留まります。

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筆者の立場をはっきり書くと、この処理は失敗だったと考えます。物語上の必然がないキャスティングで観客の期待を煽り、回収を駄洒落で済ませた点は、丁寧に積み上げてきた本作の中で唯一浮いています。

ヘイワードの目的とヴィジョン再起動計画

SWORD長官ヘイワードは、回収したヴィジョンの遺体を兵器として再起動させる計画を進めていました。最終話に現れる白いヴィジョンはその成果です。

彼はワンダを脅威として利用する立場で、外側にもう一つの加害者がいる構図が本作を単純な善悪劇から遠ざけています。

※画像はAIによるイメージ

『ワンダヴィジョン』偽CM(劇中CM)6本の意味と元ネタ一覧

劇中に挟まる偽CMは全6本で、いずれもワンダの過去やMCU本編と結びついています。楽しげな映像の裏に傷が隠される構造です。

分類 話数 CM商品 関連する出来事
ワンダの過去 第1話 スタークのトースター 赤い点滅がマインドストーンを想起させる
ワンダの過去 第5話 ラゴスのペーパータオル 『シビル・ウォー』でワンダが被害を出した都市
ヒドラ 第2話 ストラッカーの時計 双子に人体実験を施したヒドラ幹部
ヒドラ 第3話 ヒドラ・ソーク(石鹸) 洗脳を連想させるヒドラ関連の商品
後の展開 第6話 YO-MAGICのヨーグルト 自力で生き延びられない存在の暗示とされる
後の展開 第7話 NEXUSの精神安定剤 現実は選択できるという趣旨の示唆

注目したいのは、第4話・第8話・第9話にはCMが無いことです。この3話はいずれもヘックスの外側や過去へ視点が移る回で、CMの有無がそのまま「今どちらの世界を観ているか」の目印になっています。

6本を並べると、ヒドラの実験、ラゴスの惨事、そしてヴィジョンの喪失と、ワンダが受けた傷と与えた被害がほぼ時系列に並びます。偽CMは小ネタではなく、ワンダの加害履歴を自白する装置だったというのが筆者の見立てです。

結末はどうなる?最終話とその後を解説

最終話では、白いヴィジョンが送り込まれ、ワンダの作り出したヴィジョンが対峙します。同時にワンダとアガサの魔女同士の決戦が進みました。

テセウスの船で決着する白いヴィジョンとの対決

2体のヴィジョンは戦闘ではなく問答で決着します。部品を入れ替えた船は同じ船かというテセウスの船の議論を通じ、白いヴィジョンは自分が何者かを思い出して飛び去りました。

クライマックスの決着を殴り合いではなく哲学問答に委ねた判断は、MCUのフィナーレ設計として明確に異例です。力ではなく定義で勝たせた点に、本作の主題が最もよく表れていると筆者は考えます。

ワンダは自ら幻想を手放す

勝利したワンダはヘックスを解き、住民を解放します。同時に、自ら生み出したヴィジョンと双子が消えることも受け入れました。

ただし解放は感動的な場面としては描かれません。街から幻想が剥がれていく中、住民たちはワンダへ憎悪と敵意の視線を向けます。ヒーローの勝利を、被害者の目線で締めくくった選択は率直に見事でした。

アガサはアグネスの人格に封じられた

敗れたアガサは殺されず、ワンダの呪いによって「詮索好きな隣人アグネス」の人格へ閉じ込められ、街に留め置かれます。

自分が他人に強いたことを、ワンダが今度は加害者として実行する結末です。この一手があるからこそ、ワンダは反省したヒーローとしては終われませんでした。

2つのポストクレジットと『ドクター・ストレンジ2』への接続

中間のポストクレジットではモニカがスクラルの工作員に接触され、宇宙での物語を示唆されます。末尾では山小屋のワンダの傍らで、スカーレット・ウィッチが魔法書ダークホールドを読んでいました。

この続きが映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』で描かれます。

『ワンダヴィジョン』を観る順番|先に観るべきMCU作品

先に観るべきは『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の3本です。配信先はディズニープラスで、本編9話とあわせて同じサービス内で視聴できます。

この3本で、ワンダとヴィジョンの出会い、ラゴスの惨事、そしてヴィジョンの死という3つの前提がそろいます。序盤の違和感が「悲しい」と感じられるかどうかは、ここを観ているかで大きく変わります。

3作品は約141分・約147分・約149分で合計およそ7時間半、本編9話は約6時間です。二週末あれば無理なく追える分量ですが、最新の配信状況や上映時間は各公式ページでご確認ください。

『ワンダヴィジョン』の評価は?エミー賞と考察ブームの反響

第73回エミー賞では23部門でノミネートされ、衣装デザイン・主題歌などの部門で受賞しました(正確な部門名と受賞数は公式記録での確認をおすすめします)。批評サイトRotten Tomatoesの批評家スコアも90%前後で推移し、評価は総じて高い水準です。

週1話ずつの公開だったため、次回までの1週間がまるごと考察の時間になりました。筆者も当時リアルタイムで追っていましたが、金曜の朝に1話観て、翌週まで偽CMの意味を延々こねくり回すあの1週間は、映画では味わえない体験でした。

第7話の楽曲『Agatha All Along』はBillboardの複数チャートに入り、SNSでも大きく拡散されました。作品の外側にまで話題が広がった点は、本作を語るうえで欠かせません。

考察|『ワンダヴィジョン』が難解と言われる本当の理由

難解さの正体は「誰の視点か」が伏せられていること

個人的に、難しいのは設定の複雑さではないと考えています。視聴者が「誰の視点で見ているか」を途中まで知らされない点にこそ、あの独特の座りの悪さがあります。

第1話から第3話は、実質的にワンダの願望をそのまま流した映像です。私たちは最初、加害者の妄想を娯楽として見せられているわけです。

ヒーローを加害者にした度胸

もう一つ興味深いのが悪役の配置です。アガサは黒幕として立ちはだかりますが、街を人質にしていたのはワンダ本人でした。

ヒーローが加害者になる構図を、ディズニープラス初のオリジナル作品でやりきった判断は率直に評価したいところです。

シットコムという器の必然と、メタ作品の系譜

ホームコメディは「何が起きても最後は元通り」というジャンルです。喪失を認めたくないワンダが逃げ込む場所として、これ以上ふさわしい器はありません。

作られた日常に閉じ込められる物語という点では『トゥルーマン・ショー』や『プレザントビル』の系譜にありますが、本作は閉じ込めた側と閉じ込められた側が同一人物である点が決定的に異なります。

MCUドラマの転換点としての本作

同年の『ロキ』『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』と並べると、MCUドラマが週次配信と考察文化を前提に設計され始めた転換点が本作だったと筆者は考えます。

ここで確立されたスカーレット・ウィッチの称号とダークホールドが『ドクター・ストレンジ2』へ、アガサの物語がドラマ『アガサ・オール・アロング』へ引き継がれました。単体で完結せず、次を生み続けた点に価値が残ります。

観る前に知っておきたい注意点

正直にお伝えすると、前半3話は意図的に退屈で不気味に作られています。筆者も初見では第2話の途中で一度停止し、翌日に再開しました。

MCU初見の方や、明快なアクションを期待している方には入口が険しい作品です。逆に第4話まで進めば構造が一気に見えるので、脱落しそうなら第4話を目標にすると乗り越えやすくなります。

まとめ

『ワンダヴィジョン』は、ワンダが悲しみのあまり街ごと現実を書き換えてしまった物語です。シットコム風の演出、6本の偽CM、アグネスの不自然な言動、偽ピエトロの登場は、すべて真相へ向かう伏線でした。

構造をつかんで2周目を観ると、明るい場面ほど痛みが透けて見えてきます。喪失と向き合う物語を求めている夜に、腰を据えて向き合いたい一作です。

よくある質問

『ワンダヴィジョン』は何話ありますか?

全9話です。2021年1月15日からディズニープラスで配信が始まり、3月5日に最終話が公開されました。

ピエトロは誰だったのですか?

ワンダの実弟ではなく、アガサに操られていた住民ラルフ・ボーナーです。エヴァン・ピーターズが演じたため、当時はマルチバースとの関連が大きく話題になりました。

アガサは最後どうなりましたか?

ワンダの呪いで「アグネス」の人格に閉じ込められ、ウエストビューに留め置かれました。倒されて退場したわけではないため、後の物語へつながります。

視聴前に何を観ておけばいいですか?

『エイジ・オブ・ウルトロン』『シビル・ウォー』『インフィニティ・ウォー』の3本です。ワンダとヴィジョンの関係とマインドストーンの背景が分かり、序盤の違和感を早く楽しめます。

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この記事を書いた人
ショウゴリラ|映画好きコンシェルジュ

映画とバナナをこよなく愛する中年ゴリラ。新作から名作まで幅広く映画を追いかけ、作品の魅力や気になるポイントを分かりやすく紹介しています。

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