『ブラック・ウィドウ』、どこで観ればいいのか分からない——そんな一本ではないでしょうか。
MCUを順番に追っていて、「この作品だけ位置が浮いている気がする」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
公開はフェーズ4の一作目。ところが物語が描かれるのは、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(劇中2016年)と『インフィニティ・ウォー』(劇中2018年)のあいだです。
実はこれ、ナターシャ・ロマノフがアベンジャーズの前から姿を消していた“空白の時期”そのもの。さらに冒頭だけは1995年のオハイオ州が舞台という、二段構えの時間軸になっているのです。
そこで今回は、この作品がMCU全体のどこにハマるのかを整理しました。
ぜひ観る前に押さえて、ナターシャの物語を最後までまっすぐ受け取ってください。
ブラック・ウィドウの時系列と見る順番は何番目?
ナターシャ登場作だけで並べると6番目。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』の直後、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の直前に挟まります。
公開は2021年ですが、描かれる出来事は2016年。公開順と時系列がずれている代表例の一本です。
ナターシャ登場作を時系列順に並べると?
公開年ではなく“劇中年”で並べると、ねじれの正体が見えます。
| 作品名 | 公開年 | 劇中年 |
|---|---|---|
| アイアンマン2 | 2010年 | 2011年 |
| アベンジャーズ | 2012年 | 2012年 |
| キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー | 2014年 | 2014年 |
| アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン | 2015年 | 2015年 |
| シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ | 2016年 | 2016年 |
| ブラック・ウィドウ | 2021年 | 2016年 |
| アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー | 2018年 | 2018年 |
| アベンジャーズ/エンドゲーム | 2019年 | 2018年・2023年 |
※劇中年はマーベル公式の年表に基づく表記です。
公開順では最後、劇中年では6番目。この一行のズレだけが混乱の原因なので、表で見れば迷いは消えます。
冒頭シーンだけ1995年なのはなぜ?
幼いナターシャが「偽りの家族」と暮らしていた時代を、先に観客へ見せるためです。
ここで映る家族の風景が、そのまま2016年パートの動機になります。同じ1995年を描いた『キャプテン・マーベル』が“ヒーローの誕生”を描いたのに対し、本作の1995年は“ヒーローになれなかった少女”を描く。同じ年を正反対の意味で使った対比構造は、筆者としてMCUでも屈指の巧さだと感じます。
1995年はMCUの他作品と重なる?
『キャプテン・マーベル』(劇中1995年)と舞台年が重なり、同じ年に二本のオリジンが並走していたことになります。
ただし『キャプテン・マーベル』の主な舞台はロサンゼルスやルイジアナ州で、ナターシャ達がいたオハイオ州とは離れており、接触の機会はなかったと考えられます。
あらすじは?結末のネタバレなしで解説
暗殺者として育てられたナターシャが、かつての「偽りの家族」と再会し、自分を作り上げたスパイ組織レッドルームに決着をつける物語です。
政府に追われる逃亡生活のさなか、十数年ぶりに再会した“妹”エレーナから、レッドルームが今も存在し、女性たちを化学的に洗脳して兵器として扱っていると知らされます。
この物語が「救出劇」ではなく「解放劇」である点が肝で、敵を倒すことより支配を解くことに主眼が置かれています。筆者としては、ここがMCUの他作品と決定的に違う設計だと考えています。
「偽りの家族」とは誰のこと?
1995年のオハイオで一緒に暮らしていた4人が、任務のために組まれた家族です。
- ナターシャ・ロマノフ/スカーレット・ヨハンソン
- エレーナ・ベロワ/フローレンス・ピュー(“妹”)
- メリーナ/レイチェル・ワイズ(“母”・天才科学者)
- アレクセイ=レッド・ガーディアン/デヴィッド・ハーバー(“父”・ロシアのスーパーソルジャー)
任務終了後は強制的に離散し、姉妹はレッドルームへ送られました。血のつながらない4人の再会が、本作の推進力そのものになっています。
ドレイコフとタスクマスターの正体は?
※ここから軽微なネタバレを含みます。
ドレイコフはレッドルームを率いる支配者で、少女たちを兵器化してきた黒幕です。
かつてナターシャは彼の暗殺任務でブダペストの建物ごと爆破を実行し、その場に居合わせた娘アントニアを巻き込みました。生き延びたアントニアが父の実験で自我を奪われ、相手の動きを模倣する戦闘員タスクマスターにされている——この因果が明かされる構造です。
監督・上映時間・制作の情報は?
監督は『さよなら、アドルフ』『ベルリン・シンドローム』のケイト・ショートランド。上映時間は133分で、撮影はノルウェーやイギリス、ハンガリーなどで行われました。
『さよなら、アドルフ』でナチス高官の子どもたち、つまり“加害の側の家族”を撮った作家である点が重要です。本作の「偽りの家族」というモチーフに彼女が起用されたのは偶然ではないと、筆者は考えています。
ブラック・ウィドウは『シビル・ウォー』のどこから分岐する?
空港での戦いの直後、ナターシャがトニー・スタークから「追われる身になる」と告げられる場面のあとから分岐します。
『シビル・ウォー』ではソコヴィア協定に賛同しながら、最終的にスティーブ側を逃がしました。その結果、サディアス・ロス長官に追われる立場となります。
体感の目安としては、『シビル・ウォー』の3分の2ほどが過ぎたあたり。他のメンバーがラフト刑務所やシベリアへ向かう裏で、彼女だけが過去へ向き合っていたわけです。
ラストシーンはどこにつながる?
レッドルーム崩壊後、金髪ボブに変えたナターシャが「友人を脱獄させる」と言い残してジェット機で飛び立ちます。
これは『シビル・ウォー』ラストで、スティーブがクリント達をラフト刑務所から助け出す場面への接続です。“足”を用意したのはナターシャだった、と分かる仕掛けで、思わず膝を打つ繋ぎ方でした。
ポストクレジット(ネタバレ)はエンドゲームの後?
その通りで、ナターシャの墓が映ることから『アベンジャーズ/エンドゲーム』の決着後、劇中2023年以降だと分かります。
登場するヴァレンティーナは、素性の不明な政府側の人物としてエレーナに任務を斡旋するリクルーターです。
彼女は『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(劇中2024年)にも姿を見せますが、前後関係は公式には明示されていません。この場面はドラマ『ホークアイ』(劇中2024年)へ接続していきます。
公開延期と提訴騒動は何だった?
コロナ禍による約1年2か月の延期と、劇場公開とDisney+同時配信を巡る訴訟という、二つの“出来事”を抱えた作品です。
当初は2020年5月の北米公開予定でしたが、パンデミックにより延期。最終的に日本では2021年7月8日、北米では7月9日に公開されました。
スカーレット・ヨハンソンの提訴と和解とは?
本作は劇場公開と同時に、Disney+の追加課金サービス「プレミアアクセス」でも配信されました。
これにより劇場興行収入に連動する報酬が損なわれたとして、スカーレット・ヨハンソンが2021年7月にディズニーを提訴。同年9月に和解が成立し、和解額は公表されていません。
興行成績はどうだった?
世界興行収入はおよそ3億7,900万ドル。コロナ禍以前のMCU作品が軒並み10億ドル規模だったことを思えば、明らかに小さい数字です。
ただし同時配信という条件を考えれば、劇場だけで測るのは公平ではありません。筆者としては、この一作以降ディズニーが同時配信を取りやめ、劇場先行の期間を設ける形に戻した事実こそ、興行数字よりも重い結論だったと見ています。
エレーナは2代目ブラック・ウィドウになる?続編での扱いは?
エレーナ・ベロワは本作で初登場し、その後MCUの中心に近い位置へ進みます。
ドラマ『ホークアイ』を経て、『サンダーボルツ*』(2025年公開)ではニュー・アベンジャーズの一員に。作中の扱いから、2代目ブラック・ウィドウにあたる存在と受け止められています。
さらに『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』への登場も告知済み。本作を観ておく価値は、公開から5年経った今のほうが上がっています。
配信はどこで見れる?
現時点では、Disney+(ディズニープラス)で見放題配信中です。
Prime Videoではレンタル・購入での視聴が可能。配信状況や料金は変わる可能性があるため、視聴前に各公式サイトで最新情報をご確認ください。
こんな人には合わないかもしれない
宇宙規模の派手なバトルを求める方には、地味に映る可能性があります。
主軸はスパイ・アクションと家族のドラマ。ソコヴィア協定の前提知識がないと序盤の逃亡理由が掴みにくいため、『シビル・ウォー』だけは先に観ておくのが安心です。
筆者の考察:この一本は「隙間を埋める映画」で終わらない
時系列上は空白を埋める作品ですが、筆者としては、それ以上の役割を持った一本だと考えています。
評価すべき点は「動機」と「退場」の裏づけ
ひとつは、ナターシャの動機に説明がついたことです。
『アベンジャーズ』で彼女は「赤い記録(過去の罪)」を語り続けましたが、中身はほぼ空欄でした。レッドルームの実態が示されたことで、あの台詞の重さが後から跳ね上がります。
もうひとつは退場の意味づけです。
結末を知る観客の前で、それでも家族を救う選択を繰り返す姿を見せる。『エンドゲーム』の自己犠牲が唐突ではなかったと分かる構造です。
弱点:結末既知ゆえの緊張感不足
正直に言えば、結末が分かっている以上、生死の緊張感は生まれにくい作品です。
初見時、筆者はこの点で物足りなさを覚えました。ただ『サンダーボルツ*』を観てから再見すると、エレーナの造形の丁寧さが際立ち、印象がはっきり変わったのも事実です。
今後の見通し:エレーナは何を背負うのか
ナターシャは初登場の2010年からソロ作まで11年を要しました。女性ヒーロー単独作が長く後回しにされてきた流れの、遅れてきた一本でもあります。
その11年をエレーナは待たされないはずだと筆者は見ています。『サンダーボルツ*』で彼女が空虚さを抱えながらも仲間を率いる側に回っていたことから、『ドゥームズデイ』では“姉の後継”ではなく、集団をまとめる新世代の中心として機能するのではないでしょうか。
まとめ
『ブラック・ウィドウ』の時系列は『シビル・ウォー』と『インフィニティ・ウォー』の間、劇中年は2016年(冒頭のみ1995年)。ナターシャ登場作では6番目です。
物語はレッドルームからの解放で決着し、ラストは『シビル・ウォー』の脱獄シーンへ接続します。
観る順番に迷ったら、『シビル・ウォー』の直後に挟むのが最短ルートです。
よくある質問
『ブラック・ウィドウ』は見る順番で何番目?
ナターシャ登場作の中では6番目、『シビル・ウォー』の直後です。追われている理由が分かった状態で観られるため、序盤がすんなり頭に入ります。
上映時間はどのくらい?
133分です。
『エンドゲーム』を観る前に観ても大丈夫?
問題ありません。ただしポストクレジットは『エンドゲーム』後を前提とするため、そこだけ結末に触れます。